用心したい第一印象
営業の世界、恋愛の世界では、第一印象が最も大切であるとされています。確かに、最初に受けた印象はかなり大きく、最初で悪い印象を相手に与えてしまうと、それをリカバリーするのにかなりの時間を要してしまうことは、日常生活でしばしば経験することです。
敵か味方か?動物の如く嗅ぎ分ける
弁護士と顧客の関係も第一印象がかなり大事です。私の経験では、第一印象で抱いたその方の性格と、その後事件を進めるにつれ、わかってくる性格と大概ずれはないように思います。
動物は、初対面の相手をよく観察し、自分に対して害を与えないかどうかをまず判断するそうですが、人間も動物の仲間ですから、本能的にそのような判断をしているはずです。
人間には、それまでの経験値から、その方の顔の表情、物腰、話し方などから、敵味方を判別しているのかもしれません。だから年齢を経ていけば行くほど、第一印象で相手方の人間像をとらえるのが上手くなっていくのかもしれません。
裁判も訴状という第一印象が肝心
裁判でも同じです。裁判官の立場になって考えてみましょう。事件が配点されたとき、「これはどんな事件なのか」「誰が訴えているのか」「どんな筋の事件なのか」「代理人はどんな弁護士なのか」などについて強い興味をもって訴状を読むはずです。自分の扱う事件が簡単なのか難しいのかは、当然ながら自分がやらねばならない仕事の目安をつけるのに極めて重要な事柄だからです。
そのため訴状は極めて重要な書面と位置づけることができます。訴状段階で証拠も出して一気に裁判官の心証を固めてしまえという勢いの訴状が増えてきました。むしろ、それが主流のように思います。訴状で勝負を決めようとする書面が増えているのと同様、答弁書もそれに対抗して、中身のあるものになっていきました。
第一印象と現実のギャップ
ただし、第一印象が良過ぎると、その後、実態が明らかになったときとのギャップが大きくなってしまいます。このギャップゆえに悲劇が起こることもあります。第一印象というのは、本当に大切だけど厄介なものです。